おはようございます。
当ブログの同業の読者の方から以下のご質問をいただきました。
ちゅり男 様
平素よりブログにて勉強させていただいております。
現在、不動産投資を始めるにあたって悩んでいる点があり、連絡させていただきました。
いかに要点をまとめます。
【背景】
私 20代後半 勤務医 年収手取り1000万程度
奥さん 20代後半 勤務医 年収手取り1000万程度
子供なし
借金などは特にありません
自由に使えるお金は現在800万程度
ideco、積立NISAなどは満額まで行なっております。
そのほか、VTIを月10万程度買っております。
【要点】
・不動産投資は個人ですべきか、法人を最初から作ってすべきかで悩んでおります。
【詳細】
個人で行う場合のメリットは築古木造物件ですと、減価償却を損益通算することで、医師のように本業の年収が高い場合は節税が見込めると考えます。
しかし、築古木造物件ですと、建物価格が安い場合が多いかと思いますので実際そこまで節税効果はあるのでしょうか。
法人設立して、合同会社をつくるメリットは小規模事業共済を利用することで30万程度の節税効果を見込め、会社設立の維持費とほぼ相殺可能。
法人での不動産収入では税率が勤務医の場合個人より低くなる可能性が高い。
将来的にスモールビジネスなど行う際などにも利用できるなど、幅が広がり、経費なども節税につながる可能性がある。
【今後の方針】
上記の個人、法人のメリットを勘案すると、法人設立が良いのではと考えております。
以下のように今後、動く予定で考えております。
2019年度中に合同会社を設立し、小規模事業共済に加入する
500-1000万程度の築古木造物件を法人にて購入して、不動産のいろはを学びつつ、キャッシュフローを形成する
長文、乱文になりましたが個人、法人のメリットの有無や、私の今後の方針について、
お忙しいところ大変恐縮ですがご教示いただけると幸いに存じます。お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。
ご質問者様は投資や税制についてかなり豊富な知識をお持ちかと思いますが、当ブログの一般の読者のことも考え、基本的なところから考察します。
結論から申し上げると、私自身は築古木造物件を取得するためだけに法人を設立した経験はありません。
個人所得税の圧縮効果と家賃によるささやかなインカム目的にやっている(最近は新規買付けはなしですが)ものですから、それ以上は望んでいないということです。
築古木造物件ごときにあまり手間をかけたくないというのもあります。
私自身に経験がありませんので、築古木造物件取得のための法人設立の是非については、やはり専門の税理士に相談すべきかと考えます。
築古木造物件を個人で購入すべきか法人設立して購入すべきか?
個人所得税の損益通算の仕組みについて
個人所得税の節税を考える場合には、給与所得と損益通算が可能な所得を知っておく必要があります。
それは、
・不動産所得
・事業所得
・山林所得
です。
山林所得は私もよく分かりませんし、一般の方は知っておく必要もないでしょう。
事業所得を利用した損益通算は有効ではありますが、そもそもサラリーマンをやる片手間でレストランを経営できるわけもなく、こちらも非現実的です。
よって、実際問題としては不動産所得を利用した損益通算を考えるしかありません。
減価償却が終わった後も資産価値が残りやすいのはボロ家>中古車
事業主の場合、「4年落ち」の高給中古車を購入して、1年で減価償却を使い果たしたら売却し、また翌年に別の中古車を買う・・・というのが有名な節税法です。
ところが、中古車の問題点として
1) 中古車自体が購入後にキャッシュを生み出す資産ではない
2) 中古車は最後は鉄くずになるため、購入後の資産価値は下がる一方である
点が挙げられます。
中古車と比較した不動産のメリットは、
1) 不動産の場合、賃料収入という持続的なキャッシュフローが生まれる
2) 減価償却が終わった後も土地部分は資産価値が残る
ということです。
どうせ減価償却を利用した節税を考えるならば、減価償却が終わった後もできるだけ資産価値が残りやすいものを購入した方がよいはずです。
また、仮に少額であったとしても購入後に毎月キャッシュを生み出す資産の方が保有する価値が高いことは言うまでもありません。
最短の4年で減価償却ができるのは築22年以上の木造戸建て
中古車の場合、経過年数4年以上の物を狙うと1年で減価償却ができるため有利という話でした。
では、建物の場合はどうでしょうか?
建物の法定耐用年数は、木造が最も短く鉄筋コンクリート造が最も長いです。
具体的には、
・木造:22年
・軽量鉄骨造:27年
・重量鉄骨造:34年
・鉄筋コンクリート造:47年
です。
これは基本中の基本なので絶対に頭に叩き込んでおく必要があります。
新築の場合にはこの年数で減価償却をされることになります。
次に、中古資産の耐用年数は、
1) 法定耐用年数の全部を経過している場合:法定耐用年数 x 0.2(年)
2) 法定耐用年数の一部を経過している場合:法定耐用年数 ー 経過年数 + 経過年数 x 0.2(年)
です(小数点未満は切り捨て)。
耐用年数が短い中古物件ほど、より短い期間で減価償却をすることが可能です。
木造物件の法定耐用年数は22年で他の構造より圧倒的に短いため、築22年以上を経過した中古木造戸建てを購入すれば、
22 x 0.2 = 4.4(年)→ 4年で減価償却が可能です。
どう頑張っても自動車のように1年で減価償却をすることはできません。
最短で4年ということです。
当然ですが、建物部分しか減価償却はできない
当たり前のことですが、建物部分しか減価償却はできません。
仮に土地付きの築25年の木造戸建てを500万円で購入したとすると、減価償却が可能なのは500万円のうちの建物部分の価格のみです。
よって、できるだけ減価償却を多く確保するためには、不動産売買契約を結ぶ時に建物部分の価格が高めになるように交渉することが必要になります。
ここは売り主と慎重に交渉を進める必要がありますが、節税効果に直結するポイントですので外せません。
仮に、交渉のうえで書面上建物部分400万、土地部分100万とできれば、400万円を4年で減価償却できますので、1年あたり100万円の減価償却が確保できます。
また、不動産関連の費用を経費として計上できるのもポイントです。
これで、家賃収入が仮に年70万(月5.8万)あったとしても、減価償却+経費分を差し引けば帳簿上は赤字になりますので損益通算をして課税所得金額を下げることが可能になります。
築古木造物件は「所得税+住民税=43%」のラインを超えている場合、個人で購入します
築古木造物件は高収入の医師と相性がよいですが、節税効果を含めてリターンを上げる手法ですので、ある程度の年収がなければ効果が薄れます。
私個人の意見としては、iDeCoなどの他の節税対策を最大限に講じたうえで「所得税+住民税=43%」のラインを超えていれば十分に価値があると思います。
課税所得金額の圧縮効果ですが、物件のスペックや契約内容にもよりますが、おおまかに数十万円というレベルで、100万円以上というのは難しいです。
また、当然ですがボロ家の購入で銀行融資が受けられるはずもありませんので、購入する場合は現金一括払いとなります。
築古木造物件のメリットは、購入時の価格と立地、契約内容によってほぼ正確なリターンを計算できることと、現金一括払いなので仮に失敗してもリスクが少ないことがあげられます。
医師のダブルインカムならば無理に手を出す必要はない気もします
ここからはあくまで私個人の意見ですが、医師のダブルインカムで両者とも手取り年収1000万円ならば、無理にそれ以上の労力を築古木造戸建投資に割く必要が低い気がします。
私が同じ状況ならば、20代後半で子供がいないのであれば、今はお金のことに集中しすぎずに余暇を楽しむことにします。
手取り年収1000万円のダブルインカムって世間一般的にみたら異常な世界ですし、医師は専門職で職を失う危険性も当面はありませんから、それで十分とも言えます。
過度な贅沢を避けて適切な家計管理をすれば、手間のかからない金融資産投資だけでも十分な配当金が得られる生活ができますよ。
まとめ
築古木造物件取得のために法人設立した経験がありませんので、今回は上記の回答が精一杯になります。
課税所得金額を数十万円圧縮する効果+月数万円程度のささやかなインカムは期待できます。
こんな記事も書いています。
医師のダブルインカムに加えて、不動産投資とインデックス投資を組み合わせれば最強に近いです。適切な家計管理をすればインデックス投資だけでも十分です。
医師の場合、市況の影響を受けづらいため暴落耐性が高く、安定したキャッシュフローが期待できるのが大きな強みです。