こんにちは。
私は最新の経済情報を得るために『週間ダイヤモンド』をKindleで定期的に購読しています。
毎週医療コラムがあり、医者が読んでも興味深い内容の記事が時々あります。
週間ダイヤモンドの最新号の中に、「尿のpHが低い人ほど将来の2型糖尿病の発症率が高い」という興味深い記事がありましたのでご紹介させていただきます。
尿中pHで将来の2型糖尿病発症を予測できる!?
報告したのは京都府立医大の研究グループです。
具体的な試験デザインとしては、男性3119名が参加し、研究登録時に尿pHを測定し、pH 5.0、pH 5.5、pH 6.0、pH 6.5以上の4群に分けて5年間の追跡調査を行いました。
5年の追跡期間中に113名が2型糖尿病を発症しましたが、尿pHが最も低かったグループでは発症率が6.9%と最も高く、尿pHが最も高かったグループは発症率が2.6%と、発症率に約2.7倍の差があったとのことです。
尿検査のメリットは、採血検査以上に侵襲性が低く、自宅でも簡便に検査可能なこと
2型糖尿病は、採血で早朝空腹時血糖が126mg/dl以上、HbA1cが国際基準値で6.5%以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)で投与2時間後の血糖が200mg/dl以上、などで診断は可能ですから、診断には必ずしも尿pHは必要ありません。
しかし、将来的に自分が2型糖尿病を発症するリスクが高いかどうかを、尿検査だけで知ることができるとなれば非常に価値があると思います。
採血検査は病院に来れば比較的簡便に実施できるものの、注射針で血液を抜く処置が必要ですので、「自宅で簡便に」というわけにはいきません。
また、注射そのものの痛みがあったり、測定項目によってはある程度の費用がかかります。
一方、尿検査であればトイレで簡単に採取が可能ですので、「自宅で簡単にセルフチェック」というのが現実的になります。
健康意識の高まりで自己測定キットは売れるかもしれません
インターネットを通じて健康や病気に関する情報を誰でも手に入れることができるようになり、患者さんの健康意識も高まってきています。
毎年健診を真面目に受けている方は採血でチェックをしますので、上記のような尿pHで糖尿病を予測といったことは不要かもしれません。
一方で、病院が嫌いでよほどの理由がない限り受診しないという人も一定の割合でいらっしゃいます。
そういった方は、久しぶりに病院に来て検査をしてみると想像以上に悪化していることがあり、我々医者としても治療に難渋するケースが多いです。
病院に行かなくても自宅で簡易検査キットを使ってセルフチェックが可能になれば、病院嫌いの人の病気を早期発見する手助けになるかもしれません。
次の健診では私も尿中pHに注目してみます
私自身、患者さんに尿検査をオーダーすることは多々ありますが、尿潜血や蛋白、尿中白血球などはみるものの、尿中pHに注目したことはありませんでした。
ましてや自分の健診でも尿中pHの結果に注目したことなどありません。
今の健診では「尿中pHで引っかかる」ということはまずありえませんので、多くの人は検査結果に目もくれていないのが実情でしょう。
しかし、2型糖尿病の発症リスクかもしれない、と言われれば話は別です。
次回の健診では、自分の尿中pHを注意してみてみようと思います。
皆さんも次に健診を受ける時には、尿中pHの結果にも注目してみてはいかがでしょうか。
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