おはようございます。
今週の『週刊ダイヤモンド』は家族の介護特集でした。
私は医者をやっていますので、このあたりの知識は一般の方よりはあると思っていましたが、実際には知らないことも多く大変勉強になりました。
介護保険制度は改正が相次いでおり、年々状況が刻一刻と変化していますので、最新情報をキャッチし続けるのは大変です。
このような特集で、現状の介護制度と将来の展望についてまとめて勉強する機会はなかなかないため、一度は目を通しておきましょう。
介護保険制度の相次ぐ改悪に事前に備えましょう
介護保険制度は年々改正されており、しかもその大半が改悪となっています。
超少子高齢化社会が到来することが確実なうえ、すでに社会保障費が国の財政を大きく圧迫している現状を考えると、今後も制度改悪は続くと考えておくべきです。
ところが、介護保険制度がどのように改悪していっているかは、不思議なことにTVなどの報道では小さくしか取り上げられません。
森友学園や加計学園問題の与党責任を追求するのもよいですが、メディアにはこういった問題にも重点を置いて報道して頂きたいものです。
臨床医の立場からみても介護認定の希望者は年々増えている
私は神経内科を専門としています。
日本人の寝たきりの原因のNo.1は圧倒的に脳血管障害です。
医療技術の進歩で脳血管障害で命を落とす人は減りましたが、その代わりに後遺症が残って長期のリハビリや介護を必要とする人が増えています。
神経内科は脳梗塞を扱う科ですので、なんらかの後遺症が残って元と同じレベルの生活をすることが困難になり、介護サービスを利用せざるを得ない人をたくさん診察します。
また、近年社会的な問題になっている認知症も神経内科で扱う疾患であり、認知症での介護給付を希望される人も年々増えています。
希望者が増える一方、介護保険の認定基準は徐々に厳しくなっている
日常臨床に携わっている身としては、以前よりも介護保険の認定基準は徐々に厳しくなっている印象です。
特に、足腰のしっかりした認知症患者では厳しいです。
認知症患者では「取り繕い」という症状がよく見られます。
そのため、介護認定審査の調査員が訪問した時に、いつも以上に元気そうに振る舞ったり、「私は大丈夫」などと発言してしまい、それを調査員にありのままに受け取られてしまい認定がおりないのです。
このように、認知症患者は医師や赤の他人の前では調子が良さそうに振る舞ってしまう傾向がありますが、家族だけになると症状が一変するのです。
また、足腰がしっかりしている認知症患者は自宅内を歩いたりする分には特に問題ないため、脳卒中や骨折後の人より見た目に元気そうに見えてしまいます。
きちんと認定を受けるにはスマホを活用しよう
普段の生活をありのままに見てもらうために、症状に変動があるケースでは、ひどい時の状況をスマホの動画で撮影しておくことが有効だと思います。
写真や動画は症状が悪い時があることの直接的な証拠になるからです。
暴言がひどい時には録音も有効でしょう。
生活状況を細かにメモしておくことも有効ですが、やはり写真や動画など視覚に訴える効果は絶大なものがあります。
せっかくスマホがこれだけ普及しているのですから、活用しない手はありません。
掃除や洗濯ができずに自宅がゴミ屋敷になっているケースでは、ゴミ屋敷のままの状態を調査員にみてもらうようにしましょう。
間違っても訪問前に自宅を綺麗に掃除しよう、などと考えてはいけません。
親の資産状況を正確に把握していますか?
自分の家の資産状況は正確に把握している人でも、親や家族の資産となると正確に把握できている人はほとんどいないのが現状でしょう。
・年金収入はどの程度あるのか?
・退職後に年金以外の収入源はあるのか?その金額は?
・預貯金、金融資産、不動産などの資産の内訳は?
・各種保険の契約はどうなっているのか?
・親はマイホームのローンは返済し終わっているか?
・親のマイホームは亡くなった後も資産価値が残るか?誰かが代わりに住むのか?売却する場合にはいくらで売れるのか?
・介護が必要な状況になった場合、できるだけ長く自宅で生活をするのか?介護施設に早めに入所するのか?
・介護の費用は親の資産から十分に賄えるか?
・メインの介護者は誰になるのか?
・急に大病を患って意識不明、または判断能力がない状態になった時の対処は考えてあるか?(本人確認が必要な預金口座など・・・)
私自身も上記の全てがクリアできているわけではありませんが、雑誌のP.52〜53のチェックリストを参考にして少しずつ情報収集をしていこうと思います。
まとめ
親が突然介護が必要な状態になれば、今の生活状況が一変する可能性があります。
残念ながら介護保険制度は年々改悪しているため、刻一刻とかわる制度を正確に把握しつつ、いざそうなった時にどのように動くかあらかじめ検討しておく必要があります。
そのためには、まず親の生活状況・資産状況を正確に把握することが重要です。
こんな記事も書いています。
自分の資産だけでなく親の資産も「見える化」することで、問題点やその後の対処法を見出すことができます。
ちなみに、認知症のような疾患は保険で備えるべき性質のものではありません。保険の加入は必要最小限にしぼりましょう。