神経内科医ちゅり男のブログ

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宮沢孝幸著『京大 おどろきのウイルス学講義』:ウイルスに対する正しい知識を身に着けよう

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おはようございます。

本日は、宮沢孝幸著『京大 おどろきのウイルス学講義』という本の書評です。

2019年から急速に広まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、今までウイルスに対して全く関心のなかった人も関心を向けざるを得ない状況になっています。

しかし、テレビなどのマスメディアの発信している情報すら玉石混交であり、その全てが正しいとは言えないのが現状です。

ウイルスのことを正しく学ぶのであれば、やはりウイルス学の権威の書かれた本に触れるのが一番でしょう。

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宮沢孝幸著『京大 おどろきのウイルス学講義』:ウイルスに対する正しい知識を身に着けよう

本書の中で面白いと思った点を3つ紹介します。

1. 今現在研究されているウイルスは病原性ウイルスばかりで氷山の一角にすぎない

2. ウイルスの定義と新型コロナウイルスにエタノール消毒が有効な理由

3. ゲノム多様性の獲得、胎盤形成などにレトロウイルスが貢献してきた

以下1つ1つ掘り下げてみていきます。

 

 

1. 今現在研究されているウイルスは病原性ウイルスばかりで氷山の一角にすぎない

2019年から大流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因であるウイルスはSARS-CoV-2という名称です。

このように、人間に対して病原性を持ち、感染力が高く急速に拡大する性質を持つウイルスは世界規模で甚大な健康被害をもたらしますので、研究も急速に進みます。

今現在使用されている新型コロナウイルスに対するワクチンは、長期的な有効性・安全性に関してリアルワールドデータを積み上げる必要があります。

しかし、わずか1年や2年である程度の感染予防効果、安全性の確立したワクチンを開発できるテクノロジーの進化には驚かされるばかりです。

 

新型コロナウイルス感染症以外にも、人間に広まったらより悲惨な結果をもたらしうるウイルスというのは無数に存在します。

つまり、動物を宿主としている時には何の病気の症状も引き起こさないにも関わらず、人に感染すると恐ろしい病気を引き起こす可能性があるウイルスがたくさん潜んでいるのです。

こうした、現時点では人体に対する病原性が明らかになっていないウイルスに関しては、研究予算がつかないため、そのほとんどが未知のままになっています。

特定のウイルスの研究だけを進めるのではなく、今の時点では人体に対して無害ではあるものの、将来的に大きな危険性をはらんでいるウイルスにも目を向けるべきだと著者は説きます。

 

2. ウイルスの定義と新型コロナウイルスにエタノール消毒が有効な理由

ウイルスという名前はほとんどの人が聞いたことがあると思いますが、その定義はと問われるとはっきり答えられない方も多いのではないでしょうか?

本著によれば、ウイルスの定義とは、

1. ゲノムはDNAまたはRNAであり、核酸としてDNAかRNAの一方のみを持つ

2. タンパク合成のためのリボソームを持たず、生きた細胞の中でしか増殖できない

3. 2分裂による増殖形態をとらない。増殖過程で暗黒期と呼ばれる感染性を消失する時期がある

4. 生活環の中にウイルス粒子を形成する時期がある

となります。

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、一本鎖RNAウイルスの一種であり、RNAを取り囲むカプシド(タンパク質の殻)に加え、その周囲にエンベロープ(脂溶性の膜)を保有しています。

エンベロープというのはウイルス由来のものではなく、ウイルスが宿主の細胞を破って出ていく時に、宿主の細胞膜の一部を拝借して形成されます。

エンベロープは脂溶性ですので、エタノールなどの有機溶媒に弱い性質を持っています。

よって、新型コロナウイルスに限らず、エンベロープを保有しているウイルスに関しては、エタノール消毒が基本的に有効と考えられます。

 

3. ゲノム多様性の獲得、胎盤形成などにレトロウイルスが貢献してきた

ウイルスというと病気を引き起こす悪いものというイメージが強いですが、実は動物の進化や胎盤形成など良い点にもウイルスが貢献しています。

著者の宮沢先生はレトロウイルス研究の権威ですが、レトロウイルスというのは大変おもしろい性質を持っています。

本来、DNAに書かれた遺伝情報(設計図)というのはメッセンジャーRNA(mRNA)に「転写」され、それがリボソーム(タンパク合成工場)で「翻訳」されてタンパク質が合成されます。

ところが、レトロウイルスは逆転写酵素というものを保有しており、RNAからDNA(設計図)を作ることができるのです。

自分のウイルスRNAを逆転写酵素によってDNAに変換し、そのDNAを宿主細胞の核内に持ち込み、宿主のゲノムDNAの中に割り込んで、自分(ウイルス)のDNA情報を書き加えてしまいます。

一度自分の遺伝情報を宿主のDNAの中に書き加えてしまえば、あとは宿主が保有する転写・翻訳システムを活用して、ウイルスのコピーをどんどん増殖させることができます。

ここで面白いのは、レトロウイルスの持つ遺伝情報を書き加えたりコピペするといった能力が、病気だけでなく生物の進化にも大きく貢献してきたという事実です。

本書を読んで、病気を引き起こすというウイルスの悪い点だけでなく、良い点にも目を向けることで、ウイルスがより身近に感じられるようになるのは間違いありません。

 

まとめ

ウイルスを必要以上に怖がるのではなく、正しい知識を身に着けて正しく怖がることは大変重要です。

その初めの一歩として、宮沢先生の『京大 おどろきのウイルス学講義』は大変おすすめの一冊です。

 

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