おはようございます。
私の日々の情報収集源の一つにnewspicksがありますが、その中で興味深い記事がありましたので、ご紹介します。
それは、世界全体で肥満傾向が強くなっており、それに伴い世界的な健康リスク増大が懸念されるという記事です。
肥満の人が年々増加しており、ついに世界で10人に1人が肥満者に
www.afpbb.com
原文は目を通してはいませんが、かの有名な『New England Journal of Medicine』に掲載された論文ですので、論文の質はある程度担保されていると考えて良いでしょう。
もちろん、私ごときがどれだけ頑張って論文を執筆してもアクセプトしてもらえないジャーナルの一つであることは言うまでもありません(笑)
さて、自虐ネタはおいておいて本題に移りましょう。
医学的な「肥満」と「痩せ」の定義について
肥満と痩せの定義についておさらいしておきます。
医学的には、肥満、痩せはBMIで判断をします。
「BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」
ですね。これは健康診断を受けたことがある人ならなじみのある数字かと思います。
標準体重とは、BMIが22の時の体重ですね。上記の式を逆算すれば、
「標準体重=身長(m)×身長(m)×22」
となります。
肥満はBMIが25以上、痩せはBMIが18.5以下と定義されます。
肥満の中でも、BMI 25〜30は肥満1度、30〜35が肥満2度、35〜40が肥満3度、40以上は肥満4度とされ、肥満3度以上を高度肥満と定義します。
肥満よりも痩せの方が実は健康リスクが高い
肥満が生活習慣病のリスクであることはよく知られていますが、実は痩せている人の方が死亡率が高いことが分かっています。
医者にとっては常識の一つですが、一般の方はあまり知らないかもしれません。
私自身、健康診断のバイトをしていた時期がありますが、若年女性だとBMI 18.5以下というのはけっこういますね。
日本人女性には一種の「痩せ神話」みたいなものがありますが、過度な痩せは早死につながりうることを認識すべきでしょう。
特に、今後妊娠出産を控える女性の方は、過度なダイエットは早産や低出生体重児のリスクとの関連が言われているので注意してください。
予防医学の重要性は日に日に増してきている
日本の財政を圧迫している最大の原因が社会保障費の増大でしょう。
その中で医療費は右肩上がりに年々増大傾向で、日本の人口動態を見ると今後もこの傾向が続くことは間違いありません。
この傾向に立ち向かうには、予防医学に力を入れるしかありません。
たしかに医学は日に日に発展して、以前は治せなかった病気も一部治せる世の中になってきていますが、新規の治療法というのは概して治療費も高額であることが多いですから結局財政を圧迫します。
病気自体を予防する、または病気を発症しても重症化する前に食い止めて医療費を最小限に抑える視点が重要でしょう。
一次予防こそが最重要
予防医学の分野では、予防には一次予防、二次予防、三次予防があります。
一般の方が言う「病気の予防」は主に一次予防を指しています。
一次予防とは、生活習慣や生活環境の改善、健康教育の増進によって、実際に病気を発症する前に食い止めることを指します。
二次予防とは、「早期発見・早期治療」によって重症化を防ぐことです。つまり、その人の体では実際の病気が発症していますが、重症化する前に発見することで早期治療を施し、医療費の増大を抑えることです。
三次予防は主にリハビリテーションを指します。病気によってなんらかの後遺症が残った方に、リハビリや保健指導などを行い、病気の再発を防ぐことです。
ご興味あれば下の記事を読んで頂ければよく分かるかと思います。
どれも重要なのは間違いありませんが、やはり一次予防が最重要で、次いで二次予防、三次予防の順になるでしょう。
治療よりも予防にお金をかけた方がコスパがよいのは間違いなさそうです。
あまりに一次予防が発展しすぎると、患者さんがいなくなって手に職がなくなるので我々医者は困りますが(笑)
関連記事です。
我々医者も、健康意識の高い患者さんから学べることは多いです。特に運動と睡眠の重要性は強調しておきます。
国民全員が適切な運動、睡眠、食事を心がけて病気を予防するようになれば、医療費は自然と減るんですが、これが難しいんですね。せめて自分だけは気をつけるようにしましょう。