ETFは手数料の面や、選べる商品ラインナップの豊富さという点において、非常に優れた金融商品であることは当ブログで以前にも書いてきました。
では、そんな優れた金融商品であるETFにも弱点はあるのでしょうか?
あるとすれば、優良銘柄バイアスだと思います。
ETFの商品性質上避けられない、優良銘柄バイアス
優良銘柄バイアスとは、ETFの商品性質上、「ETFを購入する≒時価総額の大きな優良企業を中心とした投資」にならざるを得ないということです。
とはいえ、いきなり優良銘柄バイアスと言われても元々投資に詳しい人でないと理解できない可能性もありますので、今日は具体歴を挙げて考えてみます。
セクターETF vs 同じセクター中の10社の個別株投資の例で考えてみる
例えば、エネルギー系全体に投資するセクターETFと、エネルギー系の企業のうち、自らが厳選した10社に投資するケースで考えてみよう。
1. 参入するタイミング
以前から繰り返し書いていてくどいようですが、投資で最も重要なことはいかに安値で仕入れるかです。
安値で仕入れることができれば、その投資で勝つ確率はそれだけで大幅に高まります。
よって、理想的な参入タイミングとしてはそのセクターの株全体が大きく値を下げている時期となります。
2. そのセクター全体が大きく値を下げている原因は何か?
次に、そのセクター全体が大きく値を下げている原因を考える。
ポイントは、セクター全体に蔓延する不祥事やスキャンダルなど、企業体質が問題で値を下げている場合には参入しないこと。
当たり前のことだが、企業体質に問題があって株価を下げている場合、企業自体がつぶれて大損する可能性が高いからです。
逆に、世界的な大不況に連動してそのセクター全体も値を下げている場合で、企業体質自体は優良である場合には買いの可能性が高いです。
景気に山谷があるのは当然で、大きな景気の谷の後も、時間はかかるものの必ず株価は復活してきたことは過去のチャートを見れば一目瞭然です。
実際、リーマンショック後の世界経済も、数年間かかったものの力強く回復してきたわけですから。
3. 実際にシミュレーションしてみる
自己資本10万円としてシミュレーションしてみます。
1) エネルギー系セクターへのETF投資の場合
例えば、エネルギー系セクター全体に投資するETFが、世界大不況の影響で2000円から1000円に値を下げたため、100口購入しました(10万円購入)。
幸い、半年後に1500円まで回復したため、そこで100口全て売り抜けたとして、利益は500 x 100 = 5万円(50%増)となります(単純化するため手数料などは省略)。
2) エネルギー系企業10社に個別株投資をした場合
大企業:A, B, Cの3社
中規模企業:D, E, Fの3社
小企業:G, H, I, Jの4社
に分けて考える。全ての会社に1万円ずつ投資したと仮定しましょう。
1)のようにエネルギー系セクター全体に投資するETFを購入した場合、上記のうち大企業A, B, Cの時価総額が8割以上を占めることは珍しくなく、ETFの値動きは一部の大企業の株価の動きに近づく可能性があります。これが優良銘柄バイアスです。
・A社、B社、C社はエネルギー系の超大企業であり、1)の場合とほぼ同様に世界大不況の影響を受けた
例えば、一時期株価2000円まで売り込まれたが、2800円まで回復をした。
→初期投資30000円は42000円まで上昇した(+12000円)
・残りの企業のうち、D社とG社は不景気の波にのまれてつぶれてしまった。
→当然、初期投資2万円はゼロとなった。(−20000円)
・E社、F社、H社の3社は、一時期200円まで売り込まれたが、その後やや回復をした
例えば、一時期株価300円まで値を下げたが、なんとか400円まで回復した
→初期投資30000円は40000円となった(+10000円)
・I社, J社は倒産寸前まで売り込まれた(株価:20円)が、ギリギリの所で持ちこたえて株価はV字回復をした(株価:200円)。
→株価は10倍に上昇したため、元の2万円は20万円となった!(+18万円)
上記を全て合計すると、倒産してしまった企業が2つあるにも関わらず、I社、J社の影響でトータルとしては+182000円となっており、セクター全体へ投資するETFと比べて大きな利益が出たことになります。
優良銘柄バイアスのため、ETFで個別株投資ほど大勝ちはできない
もちろん、今のシミュレーションはあくまで仮定ですので、現実の世界ではここまでうまくいくことは少ないです。
しかし、ETFを購入している=時価総額の大きな優良大企業に資金の大半を投入している という考えは持っておく必要があります。
個別株投資の旨味は、上記のI社、J社のような一発逆転を狙った投資を選ぶことも可能という点にあります(ハイリスク・ハイリターンではあるが)。
ただし、個別株投資をするにせよ、1社、2社の集中投資は非常に危険であるため、上記のように10社前後まで分散することによって、そのうち1〜2社で倒産があったとしてもトータルで儲けられる可能性が高くなるわけです。
ただし、個別株投資は、各企業の財務諸表のチェックなど、購入するまでの事前学習に大きな労力がかかりますので、本気で投資をやってみようという強い決意がある方以外にはおすすめできないかもしれません。
まとめ
・ETFを購入する=時価総額の大きな優良大企業を中心に自分の資金を投入している
→中小企業と比べると、世界大不況の局面でも比較的値動きはおだやかな可能性
→当然、ETF自体が消滅するというリスクはほぼゼロ
・個別株投資の面白さ=世界大不況がきた時に、ほとんど倒産寸前まで売り込まれている株をあえて選んだりして、一発逆転を狙った戦略をとることも可能
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VTの積立は投資初心者には無難かつ簡便な投資手法でしょう。全世界の株式市場をそのまま買う、何も足さず何も引かないよい投資法だと思います。
個別株投資の怖いところは、下げ止まりのない投資対象も含まれていることです。まぁそれが面白いとも言えますが。