おはようございます。
本日は、ドル建て生命保険に関して読者の方からご質問をいただきましたので、そのメリット・デメリットについて考察してみたいと思います。
ドル建て生命保険のメリット・デメリットについて
ご質問の具体的な内容は下記になります。
とても興味深く読ませていただいています。
結婚したばかりの20代後半の医師です。最近はじめて資産形成や投資の勉強をはじめた時に、はてなブックマーク経由で「個人投資家は毎日の家計簿と月に1度の総資産チェックの2つを習慣にしよう」を拝見し、それをきっかけに貴ブログで勉強させていただいています。
ご質問はドル建て生命保険についてです。
10〜20年のスパンで資産形成を考える場合に、メットライフやプルデンシャルやのようなドル建て生命保険は選択肢に上がりますでしょうか?
例えばメットライフのUSドル建終身保険(ドルスマート)は、積立利率3%保障です。万が一の保障と、10数年以上先の開業あるいは子どもの学費等に備える、という目的で考えるならば、ただ銀行で寝かせるよりはメリットが大きいと思うのですが、少し調べた範囲ではドル建て生命保険はあまり評価は高くないように感じました。
友人から紹介されたプルデンシャルのセールスマンに提案されたドル建て生命保険は以下のようなものでした
・$10万の生命保険(終身)
・保険料は年$3659、10年で払込終了
・積立利率は3.5%以上を保障
・13年後には解約払戻金が、払い込んだ額($36,590)を超える
おそらく自分の見えていないリスク、問題点があると思うのですが、ちゅり男さんはどのようにお考えになりますか?
同じくらいのスパンでは他にETFやインデックス投資が選択肢に上がると思いますが、インデックス投資と比べた場合、積立利率3%保障のドル建て生命保険はどのようなメリット・デメリットがあるでしょうか?
まず、初めにいつも当ブログにご訪問いただきありがとうございます。
ドル建て生命保険に関するご質問に関しては、下記のように回答させていただきます。
ドル建て生命保険の魅力は金利・予定利率が相対的に高いことです
米ドル建て保険、豪ドル建て保険という商品があります。
国のマイナス金利政策によって長期に渡って低金利が続いている日本では、終身保険に加入しても予定利率が低く、大きなメリット得ることができません。
そこで、契約者が支払った保険料を、日本よりも金利の高い外貨で運用することで、より高いリターンを得ようというものです。
日本の保険よりも予定利率が高いため、相対的に支払う保険料が割安(為替変動を除けば)で済むのが魅力です。
また、必然的にドル建て資産を持つことになりますので、外貨資産を作りたいというニーズに答えるものでもあるでしょう。
その一方で、下記に述べるデメリットも多いことに注意が必要です。
ドル建て生命保険のデメリットはやはり為替リスク・手数料でしょう
ドル建て生命保険の最大のデメリットはやはり為替リスクです。
米国などドルの生活圏にお住まいであればデメリットでもなんでもありませんが、日本で生活を続ける以上、いざという時は円に両替しなければ、生命保険として何の役にも立たないからです。
一番最悪なケースは、
・保険料を支払っていた頃に長期に渡って円安が進行→払込保険料が実質増
・解約時、または保障を受ける時に円高が進行
→実際に支払われる金額が実質減
でしょう。
当然ですが、両替の際に為替手数料もかかります。
また、外貨建ての保険はコストの高い投資として有名です。
販売した段階で、販売会社に対して数%程度の手数料が保険会社から支払われるものが多いからです。
当然ですが、その分契約者は余分に保険料を払っていることになり、純粋に運用するよりもリターンが低くなることが多いです。
為替リスクのある商品で流動性の低さはさらにリスク
ドル建て生命保険のように為替リスクのある商品で、換金性が低いのはその分リスクが高くなります。
ETFをドル建てで購入した場合は、相場の変動があればすぐに「日本円」に戻すことが可能です。
保険の場合、解約自体は可能ではあるものの、その手続きが煩雑であったり、契約からの期間が短ければ元本割れする可能性が高いことが問題です。
為替リスクのある商品では、換金までに時間がかかればかかるほど、リスクを余計に背負うことになります。
私は、リスク資産においては流動性の低さは時に致命的になりうると考えていますので、保険で高いリターンを得ようとはあまり考えていません。
利率3〜3.5%は昨今の日本の生命保険と比べれば悪くはないが、S&P 500の平均リターンに劣後する
終身型の生命保険においては、同じ保障額であれば予定利率が高いほど毎月の保険料は安くなります。
今の日本では考えられないことですが、バブル期には日本の終身型生命保険でも、予定利率が5〜5.5%という時代がありました。
このような保険は今ではどれだけ探しても絶対に存在しないため、「お宝保険」と呼ばれ、保険会社から契約見直しの勧めがあっても絶対に乗ってはならないと言われます。
さて、問題は上記の保険の予定利率3〜3.5%というのが、米国市場へのインデックス投資と比べて優位性があるかどうかです。
下が米国株式市場の代表的な指数の一つであるS&P 500の超長期チャートです。
超長期月足チャート比較・S&P500とドル指数 : JP法株価分析システム から引用
S&P 500の過去の平均リターンが6%前後と言われています。
過去の成長がこのまま未来永劫続くかどうかは不明ですが、多くのドル建て生命保険の予定利率は、S&P 500の平均リターンに劣後していることは知っておく必要があります。
まとめ
ドル建ての金融商品を購入するならば、私ならばドル建て生命保険ではなく、ETFを購入します。
その理由としては、
・過去のS&P 500の平均リターンは6%前後であり、ドル建て生命保険の予定利率3〜3.5%を大きく上回っていること
・為替リスクのある商品では流動性の低さが致命的になりうること
です。
万が一の時に必要なお金は、やはり「円建て」で「必要最小限」の保障を購入するのが良いと考えます。
こんな記事も書いています。
日本では、昔から保険の人気が非常に高いです。認知症専用保険のように、本来保険で備えるべき性質ではない物に対してまで、新たな保険がどんどん出現しています。
最も流動性の高い金融資産はキャッシュです。有事の時には現金を持っているものが最強です。保険は流動性に難のある金融商品であることは忘れないようにしたいものです。