おはようございます。
少し前になるのですが、読者の方から下記のご質問をいただきました。
「専門違いかもしれませんが、卵の1日当たりの摂取量は最近どのようになっているのでしょうか。以前は、1日1個以上食べるとコレステロールの取りすぎといわれたこともありますが。近年は次々と最新の知見が増えているので教えていただけると嬉しいです。」
う〜ん、これは非常に難しい質問です!
「タマゴとコレステロールに関しては専門違い」と言ってしまえばそれで終わりですが、それではなんとなく悔しいので、今回はこのご質問に私なりに答えてみることにしました。
タマゴ科学研究会が「タマゴとコレステロール」に関する知見をまとめていた!
さて、タマゴとコレステロールに関して人生で初めて真面目に調べてみました。
私は神経内科医であって栄養士ではありませんので、タマゴとコレステロールに関する本など自宅にあるはずもありません。
困った時のGoogle先生に聞いてみる。。
わざわざそのために図書館に行って調べるほど暇でもありませんので、Google先生の力を拝借していろいろ調べてみました。
検索すること約10分。。。
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見つけました!
「タマゴ科学研究会」というストライクど真ん中の研究会があるじゃないですか!
「タマゴ科学研究会なんてタマゴ好きにとっては常識だろ」という熱い方がいたらコメントお待ちしております。
私は今回Google先生に聞くまで全く知りませんでしたので、この場を借りて皆様にご紹介させていただきます。
タマゴ科学研究会のご紹介!
さて、タマゴ科学研究会について詳しく見ていきましょう。
ご興味ある方は下記のホームページからどうぞ。
発足したのは2013年2月で、すでに約4年半の学会活動実績があります。
そしてちゃんと年1回、タマゴシンポジウムも開かれています!
テーマは「タマゴが創る未来の食生活」とのことです。すごいですね。。
私が無知だっただけで、すでに2013年から5年連続で開催されているようですね。
近く(会場は東京)にお住まいの方で、タマゴに関して興味があれば学会に参加してみるのもよいでしょう。
他のどの学会よりも、タマゴに関する最新の知見が得られることは間違いありません。
以前と比べると学会はずいぶん細分化されており、最近ではどんなマイナーな内容でも学会が存在している印象でしたが、タマゴに関する学会も実在しているとは新たな発見でした。
「タマゴとコレステロール」「タマゴの魅力」という今回の質問にパーフェクトな冊子を発行している!
http://japaneggscience.com/information/pdf/eggandcholesterol.pdf
http://japaneggscience.com/information/pdf/appealofegg_revision.pdf
う〜ん、やはりタマゴ科学研究会の名は伊達ではないですね。
タマゴ科学研究会が『タマゴとコレステロール』『タマゴの魅力』に関する最新の知見を完璧にまとめてくださっています。
まさにperfect。。
ホームページから誰でも無料でダウンロードして読むことができます。
もしGoogle先生に聞いても何も見つからなければ、真面目にpubmedで文献を引っ張ってこようかと思っていたのですが、この冊子があれば不要です。
正直、これを隅から隅まで読んでいただければタマゴのコレステロールに関してはこの世で右に出るものはいない、といったレベルに到達できそうです。
血中総コレステロール値と冠動脈疾患による死亡リスクには相関があるが、卵の摂取量と血中コレステロールには相関がない
「タマゴとコレステロール」P.7から引用
上記は非常に有名な図ですね。
血中総コレステロール値が上昇するにつれて、冠動脈疾患による死亡リスクが上がるというものです。
このデータによって、「コレステロールが高くなると動脈硬化が進んで心臓病や脳卒中による死亡率が上がる」と一般的に信じられています。
「タマゴとコレステロール」P.13から引用
卵には他の食品と比べてコレステロールが多く含まれるのは事実ですが、健康な人においては卵を毎日摂取しても血中コレステロール値は変わらないことが報告されています。
それを示すのが上の図です。
卵をほとんど食べない人でも、一日2個異常食べる人でも血中総コレステロール値がかわらないことが見てとれます。
健康な人であれば、日本人の平均卵摂取量である1日1個程度ならば卵を食べても問題なさそうです。
卵にはコレステロールが多く含まれるにも関わらず、摂取量と血中コレステロールとの相関がない理由として、卵白の成分にコレステロールを低下させる作用がある可能性などが指摘されています。
卵摂取頻度と冠動脈疾患発症リスクには相関がない
「タマゴとコレステロール」P.18から引用
一方、上記の図は、卵をほぼ毎日摂取する群でも週1回未満しか摂取しない群でも冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)の発症リスクはかわらなかったという疫学データです。
図はありませんが、脳卒中に関しても卵の摂取量による発症率の差は見られなかったとのことです。
「卵を毎日摂取すると動脈硬化性疾患を発症しやすい」というのは誤りで、健康な人では1日1個程度であれば卵を食べても動脈硬化性疾患発症率は変わらないというのが正しそうですね。
卵の摂取量と糖尿病発症リスクには相関がない
「タマゴとコレステロール」P.18から引用
同じく、卵の摂取量と糖尿病発症率に関するデータです。
右側に行くほど卵の摂取量が多くなり、左側に行くほど少なくなります。
卵の摂取量と糖尿病発症率との間に相関は見られませんでした。
また、上記の図にはありませんが、既に糖尿病を発症している患者においても卵の摂取量と動脈硬化性疾患発症リスクには相関が見られなかったとのことです。
まとめ
卵にはコレステロールが多く含まれるが、実際の血中コレステロールを上昇させるわけではない。
健康な人であれば、日本人の平均卵摂取量である1日1個程度であれば冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患のリスクを上昇させない。
こんな所でしょうか。
いや〜、日常臨床では身につかない知識を手に入れることができました。
世の中、いろいろな研究をされている方がいらっしゃいますね。尊敬致します。
こんな記事も書いています。
尿検査で将来の糖尿病発症リスクを予想できるというのは知りませんでした。非常に面白い研究結果だと思います。
世界的に肥満者の割合が増えており、全人口の1割を超えたようです。また、やせの健康リスクは肥満よりも高いことが知られており、こちらも注意が必要ですね。