こんにちは。
いつもは投資や資産形成に関する記事が多いですが、今日は少し趣向をかえてマーケティングについて考えてみたいと思います。
日本では、学校でマーケティングについて勉強することは一般的ではありませんが、社会人ならば全ての人に必要なスキルと言えます。
あなたがどんな業種であったとしても、何かしらの商品、情報、サービスなどを他人に提供することによって、その対価としてお金を受け取るはずだからです。
ところが、他人にモノやサービスを売りこむ時に、同じモノやサービスであってもマーケティング戦略が的確かどうかによって成果は大きくかわってくるので注意する必要があります。
マーケティングの極意は他の商品と決定的に違う何か一つだけをアピールすること
一口にマーケティングといっても、何(商品、サービス、情報etc・・・)を誰に売り込むかによって、細かい手法に関しては最適解がかわってくると思います。
ですが、そもそもマーケティング全般の考え方、方向性といった土台部分が間違っている場合には、細かい手法についてどれだけ議論を重ねてもその努力は無駄に終わることが多いです。
そこで、本日はマーケティングの基本的な考え方や、押さえておくべきポイントを具体例を挙げながら見ていこうかと思います。
レモンの販売戦略からマーケティングを学ぶ
いきなり話が飛んで申し訳ないのですが、皆さんはレモンの販売戦略について考えたことがあるでしょうか?
レモンはそれ単体で食べても酸味、すっぱさが他の果物と比べて強く、リンゴを丸かじりで食べる人はいても、レモンを丸かじりで食べる人というのはあまり聞いたことはありません。
そもそも、酸味というのは自然界では食品の腐敗を意味するようで、赤ちゃんは酸味が本能的に苦手だと言われています。
今でこそレモンを料理に使うのは当たり前に普及していますが、食品の腐敗を意味する(要するに人間にとって危険信号)酸っぱいものをあれだけ大衆に普及させるとは、並大抵のマーケティング戦略ではないことが伺えます。
では、レモンがなぜあれだけ売れるのかを考えてみたいと思います。
まず初めに考えていただきたいのは、レモンと言えばパッと何が思い浮かぶか?ということです。
黄色い、すっぱい・・・など様々あるでしょうが、その中の一つにビタミンCという成分が出て来るのではないでしょうか?
誰に聞いても、「レモンと言えばビタミンCが豊富!」というのは常識になっています。先進国ならば知らないほうがおかしいといったレベルです。
私は、これこそがレモンのマーケティング戦略の特筆すべき点だと思います。
不勉強なので誰がこれを普及させたのかは知らないのですが、
「レモンの酸っぱさ=ビタミンCが豊富である証拠」という図式を作り上げた方のセンスはすごいと思います。
そして、ビタミンCは免疫力強化、美肌・美白、ストレス抵抗性に効果があることと合わせ、レモン摂取=ビタミンC=健康に良いとなります。
レモン=酸味≒食品の腐敗とはたいそうな違いです(笑)
さらにすごいのは、実際にはレモンよりもビタミンCの含有量が多い食品はたくさんあるにも関わらず、レモンと言えばビタミンCというイメージを完全に作り上げていることです。
出典:vitamin.jp
上の表をご覧頂ければわかりますが、実際にはアセロラがぶっちぎりの1位です(100gあたりの含有量)が、アセロラにビタミンCというイメージはあまりないかと思います。
もちろん、レモンには他にも健康によい成分はたくさん入っているのでしょう。
ですが、ビタミンC一点に特化したからこそレモンがあれだけ売れているのではないでしょうか?
Appleのマーケティング力は半端ではない。商品名の重要性を理解しているか?
最近はシェアを落としているとはいえ、iphoneが全世界であれだけ爆発的に売れているのにはそれなりの理由があります。
携帯業界において、Appleのマーケティング力、販売戦略は日本の携帯会社を大きく上回っています。
今では多少差が縮まっているかもしれませんが、一昔前は巨人と小人くらいの差がありました。
さて、アップルの販売している携帯電話は何種類あるでしょうか?
今でこそiphone 7, 7plus, SEなど数種類ありますが、一昔前は画面のサイズも性能も完全に一択でした。
たった一種類のスマートフォンが、日本の他の全てのスマートフォンより多く売れたわけですから、それなりの理由があるはずです。
携帯電話の商品名を見ただけでもマーケティング力の差は歴然でしょう。
「iphone=私の電話」
なんとなく私でも使えこなせそう!というイメージが湧いてくる気がします。
語呂や音の響きもよく、一度聞いたら忘れにくい名前をつけているのもポイントです。
一方で、具体例に挙げてしまってDocomoさんには大変申し訳ないのですが、ドコモのスマートフォンで「V20 PRO L-01」という製品があるようです。
www.nttdocomo.co.jp ドコモのホームページから引用
V20 PRO L-01と聞いて、今何名の人が携帯電話だと分かったでしょうか?
プリンター?パソコン?タブレット?何かの暗号?・・・
何かの製品番号だろう、という程度は想像がつくのですが、具体的なモノまで思い浮かんだ人はほとんどいないのではないでしょうか?
この時点で大ヒット商品になる可能性はほぼありません。
今のスマートフォンはどの機種を選んでも、通常の用途であれば十分すぎるくらいに高性能です。
はっきり言って、メールやインターネット、ゲーム、SNSをやるくらいであれば、どれを選んでも大差はないのです。
むしろ、iphoneは中古でも値崩れしにくいですから、上記の用途であればもっと安い端末でも十分な人も多いでしょう。
それでも、
「iphoneならば他の人も使っているから安心だ!」
「iphoneの細かい性能はよく分からないけど、名前は聞いたことがあるから自分も使ってみたい」
「iphone・・・なんとなく他のスマホより良さそう(笑)。他の機種を見ても違いがよく分からないからとりあえず無難にiphoneで」
どんな理由であれ、モノが売れれば販売戦略としては勝ちです。
このように、商品名は商品の売上に大きな影響を及ぼしますから、命懸けで本気で考える必要があります。自分が精魂込めて開発した商品であればなおさらだと思います。
日本企業はあれもこれも盛り込みすぎ?→メッセージは一つだけ、簡潔に
自分が精魂込めて開発した商品の場合、その商品に愛着があるはずですから、あれもこれも消費者にアピールしたくなる気持ちはよく分かります。
ただし、注意しなければならないのは、消費者は開発者ほどその商品に精通してもいないし、初めの段階では興味すら持っていないということです。
いきなりその商品の良い点を10個も20個も紹介されても、それらの情報は頭の中で整理できず混乱を起こすだけなのです。
新規の情報を複数同時に頭の中で処理することは、ごく一部の天才を除いては不可能です。
そして、他社の商品との違いが分かりづらいのも問題です。
スマホは様々な企業が開発をしていますが、機種によって多少の性能の違いはあるにせよ、他の商品と決定的に何が異なるのか、何が優れているのかが全く伝わってきません。
消費者の心理としては、
「いろんな機能がついていることはよく分かった。動作も速くてメールもネットもゲームも快適にできて、カメラも高画質で動画も撮れる。でも、それって他の競合他社のスマホでもできますよね?このスマホを購入する特別な理由って何ですか?」
こんな感じでしょう。
マーケティングのコツは「one message」です。
その商品が他の製品と決定的に異なる優れた点一つに絞って紹介するのがポイントだと思います。
ただし、その商品にそういった強みが一つもなければ話になりません。それはマーケティングの問題ではなく、商品自体の問題です。
売り主ですらアピールできる魅力を見つけられない商品が売れる見込みがあるでしょうか?
優れた開発者は、まずマーケティング戦略をしっかり立てて、その商品のアピールポイントを絞ってからその強みを最大限に発揮できる商品を開発するはずです。
マーケティングの極意は最もアピールしたい強み一つだけに絞って一言で紹介すること
以上のことから、マーケティングの極意を考えてみます。
まず、アピールするのはその商品の最大のストロングポイント1点だけに絞ることです。
そして、そのアピールポイントは他の商品と明確に違う何かであることが必要です。
ひと目見て「明らかに他の商品と違う!」
こう思わせなければ、消費者に注目してもらうことはできないでしょう。
そして、どれだけその商品に愛着があっても、冗長に説明しないことです。
初めからその商品に興味を持っている消費者というのは稀だからです。そんな人ばかりであれば、放って置いてもモノは売れますのでマーケティング戦略自体必要ありません。
まだその商品に全く興味を持っていない段階で、消費者が文字だらけの分厚い説明書を初めから全部通読してくれることなどありうるでしょうか?まずありえません。
図や表、写真で消費者の視覚に訴えるようにして、文章は1〜2文でごく簡潔にワンメッセージだけを伝えること。動画も有効でしょう。
テレビCMと一緒で15秒以内で処理できるくらいの情報量がちょうどよいです。
初めから5分も10分もおたくの商品に耳を傾ける消費者はいませんよ?
こんな記事も書いています。
たまたまスマホを例に挙げたので、そのつながりで携帯料金に関する考察記事です。3大キャリアを使い続けている時点で資産形成のセンスが疑われることになります。
当ブログのメインテーマの一つである資産形成ですが、単純化すれば数字のゲームに過ぎないということです。楽しんでやったもん勝ちだと思います。