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【神経内科ネタ】一過性脳虚血発作(TIA)のリスク評価にはABCD2scoreを活用しよう。

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おはようございます。

普段、お金や投資の話ばかりしていますので、たまには神経内科ネタを投入してみます。

皆さんは、一過性脳虚血発作(Transient ischemic attacks:TIA)という病気をご存知でしょうか。

一過性脳虚血発作とは、一時的に半身の脱力や呂律障害のような脳梗塞症状が出現し、その症状が24時間以内に自然消失してしまう発作を指します。

24時間以内と定義されていますが、その大半は60分以内に消失します。

「一過性」で症状がおさまってしまうため、その後病院を受診しない人も多いのですが、

TIAを発症した後48時間以内に本当の脳梗塞を発症する確率が高いことが知られており、「脳梗塞の前触れ」といってもよい病気です。

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一過性脳虚血発作(TIA)のリスク評価にはABCD2 scoreを活用しよう

TIA後の脳梗塞発症リスクを評価するABCD2 scoreとは

TIAを発症した後、90日以内に本当の脳梗塞を発症する確率は15〜20%程度と言われています。

特に、TIA発症後48時間以内は脳梗塞の発症率が高い(5%強)ことが知られています。

いったん脳梗塞を発症してしまえば、半身麻痺や呂律障害などなんらかの後遺症が残る可能性も高いですので、TIAの段階で食い止めることは非常に重要です。

TIAを発症した後、脳梗塞に対する治療を速やかに開始した場合は、脳梗塞の発症率を大きく下げられることが証明されています。

そのため、TIAを発症した場合には総合病院を速やかに受診して適切な検査を治療を受けることが重要です。

 

さて、TIAを発症した人の中で、さらにどのような人が本物の脳梗塞に進展しやすいかを評価するスケールがあります。

それがABCD2 scoreです。

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一般の方でも知っておいて損はない情報だと思いますのでご紹介します。

 

実際の症例で見てみましょう

一例を挙げます。

・65歳の男性

・◯月◯日の朝、朝食後に突然右半身の脱力が生じ、うまく歯磨きができなかった。症状は15分ほどで改善した

・同日の夕方に救急外来を受診

・受診時の血圧が160/100mmHg

・以前に大きな病気をしたことはなし

・救急外来で頭部CT・頭部MRIを施行したが、明らかな脳梗塞は指摘できず

 

この場合、

・Age(年齢) >60 1点

・Blood pressure(血圧) > 140/90mmHg 1点

・Clinical symptom(臨床症状):片側脱力  2点

・Duration(症状持続時間):15分  1点

・Diabetes(糖尿病):なし  0点

合計5点で中等度リスク群に分類されます。

TIA発症後48時間以内の脳梗塞発症率は約4.1%と推定されます。

 

中等度リスク以上のTIAは入院加療が望ましい

私の場合は、中等度リスク以上(4点以上)のTIAは脳梗塞に準じて入院加療としています。

もちろん、入院して適切な治療を施しても、入院中に脳梗塞を発症するケースはありますので、入院したから100%安心というわけではありません。

特に脳梗塞発症のリスクが高いのは、recurrent TIA(再発性TIA)です。

短期間の間にTIAを複数回繰り返しているような人は相当にハイリスクだと思ってもらってよいです。

 

低リスク(0〜3点)の場合は、脳梗塞へ進展する可能性がゼロではないことをご説明したうえで、

抗血小板剤(血液サラサラの薬)を処方し、ご本人が希望されれば外来でフォローアップとしています。

TIAの場合、来院時には無症状のことが大半なので、特に仕事をしている方だとできれば入院はしたくないという人も多いんですよね。

ケースバイケースで対応するようにしています。

 

まとめ

ABCD2 scoreを用いることで、TIA後の脳梗塞発症リスクを評価することが可能です。

TIAは短時間で神経症状が改善し、その後は普段と変わりない生活を送ることができるため、すぐに病院を受診しないケースが多いのが問題です。

万が一、TIAを発症された場合はすぐに総合病院を受診することをおすすめします。

脳神経内科や脳神経外科のいる病院ならばベストですね。

 

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