神経内科医ちゅり男のブログ

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早期癌の治療で「民間療法」や「代替治療」を選択した場合の死亡率は最大5倍以上(乳癌の場合)

おはようございます。

『週刊ダイヤモンド』の医療コラムは、海外の一流論文の要点が取り上げられることが多く、大変ためになります。

今週号では、早期癌の治療選択において標準療法と代替療法を選択した場合の死亡率の差について紹介されています。

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癌の治療で「民間療法」や「代替療法」を選択した場合の死亡率は最大5倍以上!

週刊ダイヤモンド 2017年 11/11 号 [雑誌] (外食チェーン全格付け)

週刊ダイヤモンド 2017年 11/11 号 [雑誌] (外食チェーン全格付け)

 

雑誌の特集は「外食チェーン全格付け」でしたが、個人的にはさほど興味をそそられる内容ではありませんでした。

今回ご紹介するのはP.89に掲載されている医療コラムです。

 

2017年8月に米国立がん研究所の機関紙に掲載された研究によれば、

「転移のない早期がんの治療に代替療法を選んだ患者が5年以内に死亡する確率は、標準療法を選んだ患者より2.5倍高い」

とのことです。

癌告知の精神的ショックから立ち直る前に治療選択を迫られますので、普段ならば適切な判断が下せる方でも合理的な判断が難しくなるのかもしれません。

「免疫療法で癌が消えた!」「健康食品で癌が治った」という分かりやすいフレーズに心が揺らいでしまうものなのでしょうか。

 

標準療法と代替療法での死亡率の差が特に大きいのは乳癌、大腸癌

標準療法と代替療法の間での5年死亡率の差は癌種によって大きく異なります。

最も差が大きかったのは乳がんで、代替療法を選んだ患者の死亡リスクは標準療法に比べて5.7倍とのことです。

2017年6月22日に乳癌で亡くなられた小林麻央さんのケースは記憶に新しいかと思います。

小林麻央さんのケースでも、癌に侵された乳房を温存する「温存療法」を勧めたクリニックが、不適切で違法な臍帯血移植が癌に効くとして実施しており摘発されました。

標準療法を選択していた場合に今頃どうなっていたかは誰にも分かりませんが、非常に残念な結果であったと思います。

また、代替療法の5年死亡率は大腸がんでは4.6倍、肺がんでは2.2倍高かった一方で、前立腺癌では標準療法と代替療法の間に差がみられませんでした。

 

標準治療が進化している癌種ほど代替療法との死亡率の差が大きい

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早期発見された乳癌、大腸癌、肺癌に関しては、近年標準療法が進化してきているため、代替療法との死亡率の差が大きいものと考えられます。

実際に、転移がない早期乳癌に対する標準療法の5年生存率は9割を超えていますし、大腸癌でも転移がないステージⅠ〜Ⅱでは9割を超えています。

肺癌は、進行の速い小細胞性肺癌の予後は極端に悪いですが、非小細胞性肺癌のステージⅠ〜Ⅱの5年生存率は6割〜9割程度です。

このように、以前と比べて早期がんの治療は大きく進歩していると言えます。

 

一方、前立腺癌は癌の中でも最も進行が遅い癌として知られています。

ステージCまでは、5年生存率・10年生存率ともに100%です。

進行が遅いため、高齢患者においては「経過観察のみ」が選択されるケースもあります。

元々生命予後が良い癌であるために、標準療法と代替療法の間で5年死亡率に差が見られなかったとも言えます(元々100%近ければ差が出ません)。

逆に言えば、代替療法に多額のお金を支払う理由もないわけで、代替療法を行ったから生命予後が良かったとは断言できません。

 

代替療法を選択するタイプは「高収入」「高学歴」「併存疾患が少ない若年者」

興味深いのは、代替療法を選択するタイプには、

・高収入

・高学歴

・併存疾患が少ない若年者

が多いとのことです。

その背景には、これまでの人生における成功体験や現代医療への不信感があると推察されています。

医者側としても、癌の治療法を勧める時に、「高収入」「高学歴」「大きな病気の経験のない若年者」に対してはより慎重になる必要があるかもしれません。

 

まとめ

早期発見された癌においては標準治療は年々進化しています。

「民間療法」や「代替療法」の派手なキャッチフレーズに惑わされず、きちんとエビデンスに基づいた治療選択をしたいものです。

 

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